病院薬剤師 お勉強の日々

3年目の病院薬剤師の奮闘記です。勉強・読書・気になるニュースなどを紹介していきたいと思っています。

脂肪乳剤による中毒救急

こんにちは。しがない薬剤師です。

 

脂肪乳剤による局所麻酔薬中毒の救命 

脂肪乳剤といえば

  • 糖よりも多くエネルギーを補給できる。
  • 投与速度注意
  • 単独投与
  • フィルターより内側から投与

まずはこれらを覚えるべし!

その後,それ以上あまり学んでいなかったような。

 

脂肪乳剤,イントラリピッドやイントラリポスといった,あの脂肪乳剤が中毒症状の救命に使われているんです。最近勉強して知りました。

 

日本麻酔科学会においても推奨されている

もちろん海外の学会において既に使用が推奨されています。

日本麻酔科学会からは,脂肪乳剤の投与は局所麻酔中毒へのプラクティクルガイドにおいて推奨される一つの方法となっています。

投与方法も明記されています。カッコ内は患者が70㎏の場合

  • 5mL/kg(100mL)を約1分かけて投与。その後0.25mL/kg/min(1000mL/h)で持続投与開始。
  • 5分後,循環の改善が得られなければ再度5mL/kg(100mL)を投与するとともに持続投与量を2倍の0.5mL/kg/min(2000mL/h)に上昇。さらに,5分後に再度1.5mL/kg(100mL)を投与(bolus投与は3回が限度)
  • 循環の回復・安定後もさらに10分間は脂肪乳剤の投与を継続すること
  • 最大投与量の目安は12mL/kg

 本来の栄養補給での投与速度より,かなり早い速度で落とすことになりますが,副作用報告はほぼないようです。

 

理論的には,脂肪乳剤が血中の脂溶性薬剤を取り込む。薬物濃度勾配によって組織中に分布していた薬物が血中に戻ってくる。そしてさらに,血中に戻ってきた薬剤を取り込む。結果,毒性の減弱を図ることができる。ということみたいです。(ザックリした説明ですみません)

これって局所麻酔薬だけでなく,脂溶性薬剤ならば応用できそうな気はします。向精神薬,抗てんかん薬などなど。

 

投与時のルート確保は大丈夫なのだろうか。脂肪乳剤のためだけに,ルートを一つ増やせるのかな。

脂肪乳剤で回復できず,血液ろ過透析をしようとすると,フィルターにひっかかってしまうのでは。

といった疑問もありますが。。。引き続き勉強します。

 
おわりに 

脂肪乳剤の有用性は,日本救急医学会・中毒学会も注目する話題ではありますが,その有用性・推奨度は検討課題のようです。なんといってもエビデンスが少ないのでしょう。症例報告ならいくつかあるようですが,学会レベルで推奨するにはもう少しデータが足りないのかな。

薬剤師としては,目の前の患者がなんで脂肪乳剤を投与されているんだろうとならないように。また,万が一の場合に一つの方法として提案できるように。頭の隅に入れておいてもいい治療法だと思いました。