病院薬剤師 お勉強の日々

3年目の病院薬剤師の奮闘記です。勉強・読書・気になるニュースなどを紹介していきたいと思っています。

テモダール連日投与

こんにちは。しがない薬剤師です。

 

またも悲しいニュースが。

どうして悲しニュースばかり目に入るのでしょうか。

図書館効果でしょうか。カラーバス効果ってだけならいいんですけど。

テモダール連日投与,患者死亡

骨折治療の患者、抗がん剤を39日連続投与され死亡:朝日新聞デジタル

抗がん剤の投与ミスで患者死亡 下関の関門医療センター | NHKニュース

 

患者は持参薬のテモダールを39日間も連続投与され多臓器不全により亡くなったとあります。

 

テモダールとは

一般名 テモゾロミド

効能・効果 悪性神経膠腫

用法・用量

  1. 初発の場合:放射線照射との併用にて,通常,成人ではテモゾロミドとして1回75mg/m2(体表面積)を1日1回連日42日間,経口投与し,4週間休薬する。その後,本剤単独にて,テモゾロミドとして1回150mg/m2を1日1回連日5日間,経口投与し,23日間休薬する。この28日を1クールとし,次クールでは1回200mg/m2に増量することができる。
  1. 再発の場合:通常,成人ではテモゾロミドとして1回150mg/m2(体表面積)を1日1回連日5日間,経口投与し,2 3 日 間休薬する。この28日を 1 クールとし,次クールで 1 回200mg/m2に増量することができる。

(テモダール 添付文書より引用)

 

まずは,上記1のような投与方法があるため,「連続投与=大間違い」といった誤解はしないように気をつけなければいけません。

しかし連続投与する場合は放射線照射との併用です。

そして少なくとも週に1回の頻度で血液検査を実施し,好中球数・血小板数・非血液学的な副作用の状況を確認して,継続・休薬・中止の判断の必要があります。

 

今回のニュースのポイント

私なりに考えると

  • 他院にて脳腫瘍治療中患者であった
  • 持参薬のテモダールを継続していた
  • 骨折で入院したため,主治医は整形外科医

 

まず,はっきり言います。

持参薬をおろそかにしている病院では同様の事故は確実に起こり得ます。

 

患者が骨折して入院してきた場合,当然,整形外科医が主治医となり骨折の治療にあたります。

持参薬の確認を行った薬剤師は主治医にその薬剤を継続するかの指示を仰ぎます。

ここで,医師はテモダールについて最大級の注意をはらうでしょうか。

そんなわけありません。

多数の薬剤を内服中の患者,ましてや,がん治療中の患者となると,持参薬はいじりたくないものです。

骨折の治療,手術が問題なく終わっても,患者の状態が悪化したらどうでしょう。

骨折・手術の影響なのか,持参薬剤を変更したせいなのか,持病(がんの悪化)なのか,原因がわかりにくくなってしまうのです。

そうなりたくないので,やはり医師は「とりあえず継続で」の指示を出してしまうのです。

その後はDo処方の連続です。

そして患者は悲しい結末を迎えてしまう。

 

 

関門医療センターのHPにお知らせとして以下のような文章がありました。

「持参薬に抗悪性腫瘍剤が含まれている診療情報の確認不足,当該薬剤に関する服薬方法,副作用等についての知識不足などが要因として考えられます。」

空いた口がふさがりません。

 

薬剤師がいたらこのような事故は防げたはず

対処法はいくつかあったのでは

①持参薬の鑑別で

テモダールの存在に気付けば,どういった薬剤か医師に説明できたはずです。

患者本人・家族に投与スケジュールを確認します。

本当に42日間連続投与中ならば,その何日目なのか。

5日間内服23日休薬の場合は今がどのタイミングにあたるのか。

これらの確認は当たり前です。

例えば,ビスホスホネート製剤を持参すれば何曜日に内服しているのか,月1回製剤ならば最後に内服したのはいつか。

他の薬剤でも隔日投与ならば,2投1休ならば,,,,などなど。

患者本人・家族も把握していなければ処方医院に問い合わせをしなければいけません。

②継続処方の途中で

病院では週に1回の定期処方日が存在します。

最低限その日に患者の現在の内服を確認します。

そのタイミングで,テモダールは継続でいいのかと判断を仰げたはずです。

添付文書さえ読んでいれば,「連日投与はおかしいのでは」「血液検査で確認してるのか」

病棟薬剤師がいるならなおさらです。

③そもそも大病院なのだから

国立病院機構関門医療センターは400床,32診療科あります。

単純にコンサルすればよかったのではないでしょうか。

 

このような事例はけっして繰り返してはいけません。

 

 

おわりに

薬剤師はこのような事例を防ぐために存在しているいっても過言ではありません。

ただ悲しいことに,防ぐのが当たり前なので,防げたときはニュースにならないし,みんなに知ってもらえません。

そういうものですよね。

明日は我が身と気持ちをひきしめ,添付文書を読みあさっております。